2ndレンジローバー整備事例

〜本来の安心感と、至上の走行感を維持するために〜

 ●サーモスタット交換

2001年 GH-LP60D


サーモスタットは自動車を循環するクーラント(冷却水)の制御を担っています。エンジン始動時は十分な暖気がされていないため金属を痛めやすく早急な暖気が必要となりますが、サーモスタットが弁を閉じることでクーラントが循環する面積を小さくし、暖気を早めます。そのうちエンジンが暖気されクーラントの水温も一定の温度まで上昇すると、サーモスタットが閉じていた弁を開放し、ラジエター(冷却装置)にも循環され、クーラントの水温が一定に保たれる仕組みとなっています。サーモスタットが故障すると、水温計が上がりにくかったり、逆に水温計が上がりすぎたり、という症状が出ます。放置しておくとオーバーヒートにも繋がるので、自覚症状があれば早急な交換をお勧めします。



 ●エアコンドライヤー、プレッシャスイッチ交換

1995年 E-LP46D


このクルマはエアコンが使えず冷風が出ないという症状で入庫しました。1年前にエアコンガスの充填をしたが、もう使えなくなっているとのこと。通常1年でガスが切れることはないので、どこからかリークしていると仮定しリークテストを行うと、ドライヤーとプレッシャースイッチからエアコンガスの漏れが確認できました。ドライヤーはレシーバタンクなどとも呼ばれますが、エアコンを構成する部品の一つで、エアコンガスが液体に変わっていく過程で、乾燥や不純物を取り除く役割を担っています。プレッシャースイッチはコンプレッサーの圧力を監視し、ON/OFFの管理をしています。今回のようにエアコンガスが漏れていたり、詰まっていたりする場合は、風は出てもエアコンの効きが悪いなどの症状が出てきます。快適な室内空間の中でドライブを楽しむためにも、症状が出ている方は早めの点検をお勧めします。



 

●スロットルボディーヒーター&ガスケット交換

2000年 GF-LP60D


スロットルボディーヒーターは、スロットルボディー(円柱の筒のような形をしていて、アクセルを踏むとワイヤーが連動しスロットルボディー内の空気吸入弁が開閉され、空気の流量を調節している)下に取り付けられている部品で、ヒーター内にクーラント(冷却水)を通しスロットルボディーが凍結しないよう暖気する役目を果たしています。寒さの厳しい土地では冷気の影響でスロットルボディー内の弁が固着することがありますが、日本ではあまり心配する必要のない部分ですが、このスロットルボディーとヒーターの間にガスケット(密閉率を高める部品)が挟み込まれていて、ガスケットの劣化によりクーラント漏れを引き起こしてしまいます。今回もスロットルボディーヒーターからクーラントが漏れていたので、ヒーターとガスケットを交換しました。



●クランク角センサー交換

2003年 GF-LP60D


レンジニアスの商品車(後期2ndレンジローバー)では過去に交換歴がない車両はすべて予防整備している部品です。クランク角センサーの前に、EFI(エレクトリック フューエル インジェクション)の説明をします。EFIは電子制御により燃料を噴射している装置ですが、車両情報をもとに噴射量や噴射タイミングなどをコントロールしています。その情報の中でも特に重要なのが、クランク角センサーからの情報です。エンジンを始動するときにはクランク角センサーから、クランク回転角の情報がEFIに送られ、そこから次の動作へ入りエンジン始動へと繋がります。クランク角センサーが故障するとエンジンへ情報が送られず、いつまで経ってもエンジンが始動できない状態になってしまいます。クランク角センサーが劣化してくると、エンジンがかかりにくい、アイドリングが不安定などの症状が出ることが多いので、自覚症状があれば予防整備で交換することを推奨します。もしくは過去に交換歴がないなど、長期間の交換がない場合も予防整備で交換を推奨します。



●ヒーターコアマトリックス交換

1999年 E-LP46D


2ndレンジローバーの代表的なトラブルの一つがヒーターコアマトリックスからのクーラント漏れ(冷却水)です。ダッシュボード内にはヒーターコアマトリックスという部品が取り付けられており、エンジンで温められたクーラントがダッシュボード内に取り付けられているヒーターコアマトリックス内部を通り、そこに風を当てる事によって車内に温風が送風される仕組みです。同じ箇所では、ヒーターコアOリングの劣化が原因でクーラントが漏れるケースもありますが今回はヒーターコアマトリックス本体から冷却水漏れのためダッシュボードを降ろし大掛かりな交換作業となります。クーラントが漏れてくると運転席足元の左側から漏れてくるので比較的気付きやすい箇所でもあります。クーラント漏れを発見した場合、エンジンのオーバーヒート等に繋がる前に早めの交換をお勧めします。



●ウォーターポンプ交換

2001年 GF-LP60D


ウォーターポンプはエンジンを始めとした各機関へクーラント(冷却水)を循環する役割を果たしています。ウォーターポンプが劣化してくると循環能力も低下しますが、ウォーターポンプ自体からクーラントが滲んだり、漏れてくるケースがあります。またウォーターポンプには冷却ファンが取り付けられており、劣化してくると冷却ファンが回る軸の部分にガタが生まれ異音などの原因にもなります。目視で確認できる位置に取り付けられているので、クーラントの量と合わせて確認しておきたいポイントです。



●ヒーターコアOリング交換

2002年 GF-LP60D


2ndレンジローバーのヒータコアOリング交換です。2ndレンジローバーのメジャートラブルでもある、ヒータコアOリングからのクーラント漏れ(冷却水)ですが、ほとんどのセカンドレンジオーナーにも経験のある不具合だと思います。ダッシュボード内にはヒータコアと呼ばれる部品(熱くなったクーラントがヒーターコア内を循環し、そこに風を当てることで温風が出る。)が取り付けられていますが、ヒータコアとクーラントパイプとのつなぎ目にはゴム製のOリングが使われています。このOリングが熱や経年劣化により、変形したり硬くなることで、Oリングにヒビや割れが発生し、そこからクーラントが漏れてしまいます。ヒーターコアからクーラントが漏れてくると運転席の足元左側が湿ったり、色(赤色や青色)が付着するので、定期的に確認することをお勧めします。



●エンジン腰上オーバーホール

2001年 GF-LP60D


2ndレンジローバーのエンジン腰上オーバーホール(以下、OH)です。全ての2ndレンジローバーは発売から約15年以上が経過し、多くの車両は走行距離と共にエンジン内部の汚れ(スラッジ等)が蓄積しています。このエンジン内部の汚れは走行性能や燃費の低下に繋がります。レンジニアスで販売する商品車のほとんどは、2ndレンジローバー本来の優雅な乗り心地を求めてエンジンOHを行っています。今回もエンジンを分解し、洗浄、組付け、そしてオイル洩れを予防するガスケットは新品に交換しました。滅多に開けることのないエンジン内部の部品はこの機会に丁寧に洗浄します。長年の汚れを洗浄していく様子は見ているだけで気持ちの良い作業です。



●プラグコード交換

2001年 GF-LP60D


2ndレンジローバーのプラグコード交換です。プラグコードはイグニッションコイルから送られてくる電圧をスパークプラグへ送電する役割を担い、2ndレンジローバーの場合はV8(V型8気筒)エンジンを搭載しているので、プラグコードは8本取り付けられています。プラグコードが劣化してくると、①アイドリングが不安定 ②加速しにくい ③エンジンが始動しにくい、などの劣化症状が出てきます。スパークプラグが劣化することでプラグコードに過負荷が掛かり劣化を早めるケースもありますので、レンジニアスでは同時交換を推奨しています。



●ヒーターマトリックス交換/リサーキュレーション予防交換

1997年 E-LP46D


2ndレンジローバーのヒーターマトリックス交換です。運転席の足元から冷却水漏れのため入庫した車両ですが、考えられる原因はヒーターマトリックス本体からの水漏れかヒーターマトリックスOリングからの水漏れです。ヒーターマトリックスは暖房機能を担っておりエンジンで温められた冷却水がダッシュボード内に取り付けられているヒーターマトリックス内部を通り、そこに風を当てる事によって車内に温風が送風される仕組みです。今回はヒーターマトリックス本体から冷却水漏れのためダッシュボードを降ろし大掛かりな交換作業となります。頻度で言えば10年に1回程度の交換になるのでレンジニアスではこの作業時に数年以内の交換歴が無ければ、同じくダッシュボード内部に取り付けられているブレンドモーターやリサーキュレーションの同時交換を推奨しています。今回もリサーキュレーションを予防交換しました。ヒーターマトリックスから水漏れが発生した場合は、センターコンソールから運転席側の足元に冷却水が漏れてくるので目視によって発見できます。また冷却水独特の甘い匂いが室内で感じるようであれば冷却水が漏れているサインです。



●ブレンドモーター交換

2001年 GF-LP60D


2ndレンジローバーのブレンドモーター交換です。エアコンを使用するときには温度設定と吹き出し口の選択をすると思いますが、その指令に基づき冷風と温風をブレンドし温度設定通りに送風するのがブレンドモーターです。ブレンドモーターはダッシュボード内に3個取り付けられており、運転席と助手席の温度をコントロールするフラップモーターと、吹き出し口を変化させるフラップモーターの3つがセットになっています。ブレンドモーターが故障すると冷風しか出ない、温風しか出ないというような症状が発生します。2ndレンジローバーではブレンドモーターの故障はメジャートラブルでほとんどのオーナーさんにエアコン関連の不具合は経験があるかと思います。走行には直接の影響はありませんが、世界一の乗り心地と評されるレンジローバーだからこそ室内環境も快適にしておきたいですね。



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