3rdレンジローバー整備事例
〜本来の安心感と、至上の走行感を維持するために〜
●3rdレンジローバー 左側 VCCソレノイドシール 交換
2003 GH-LM44
VCC(バリアブルカムシャフトコントロール)ソレノイドは、車両の走行状況(エンジン回転数、エンジン温度など)に合わせてエンジンオイルの油路を変えカムシャフトの角度を調整している部品です。例えば、ゆっくりと走行している時はそれほどパワーを必要としませんが、高速道路などを走行するときにはパワーを必要とするため、その時々によってエンジン出力を変える必要があります。厳密にはカムシャフトの角度を変えることで、吸気バルブの開閉タイミングを調整し、空気量の増減を制御しています。ゆっくり走行するときは空気量を少なく、高速走行するときは空気量を多く取り入れ、その時々の走行状況に合わせて効率の良いエンジン出力を実現しているのです。その VCCソレノイドにセットで取り付けられているのがソレノイドシールです。主にはオイル洩れ防止の役割を果たしていますが、ゴム製のため経年劣化や熱により変形し、それによって出来たわずかな隙間からオイルが滲んだりします。この車両もおそらく新車から一度も交換してこなかったためオイル洩れが確認でき、交換となりました。
●3rdレンジローバー ATフィルター、フルード交換
2002 GH-LM44
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)は50000kmを目安に交換を推奨しています。エンジンオイルと違って認知度の低い部分ですが、その役割は重要です。オイル交換を怠ると、ギアチェンジのタイミングで変速ショックが大きくなったり、燃費が悪いなどの症状が出ます。最悪の場合ATが故障し走行不能になるリスクもあるので大切な愛車に長く乗るためにも必ず交換しておきたい部分です。レンジニアスでは、マイクロロンというAT内部の金属にコーティングを施し、金属同士の磨耗を軽減する役割を果たす保護剤の注入もオススメしています。
●3rdレンジローバー ハーモニックダンパー交換
2008 ABA-LM44
ハーモニックダンパーは車両下部のトランスファーに取り付ける部品です。走行中、ある一定の速度域に入ると異音(何かが共振しているような音)が発生するという症状で入庫。症状の出るタイミングや異音の傾向から、トランスファーの共振による異音と仮定し、共振を抑える役割を持つハーモニックダンパーを取り付けました。ハーモニックダンパーは重量が2〜3kg程度の重りで、これを取り付けることによってトランスファーの僅かな振動を抑える役割を果たします。走行中の異音は一度気になると、ずっと気になるもの。走行異音で悩まされている方は、ぜひご相談ください。
●Eボックス内、冷却ファン交換
2003年 GH-LM44
Eボックスはエンジンルームの左側に取り付けられている箱で、その中には、主にECM(エンジンコントロールモジュール)とEAT ECU(オートマチックトランスミッション エレクトロニックコントロールユニット)が設置されており、そのボックス内の冷却を担っているのが冷却ファンです。ボックス内には温度センサもあり、ボックス内の温度が35度に到達すると冷却ファンが作動し、35度を下回ると停止します。エアーは車室から導入し、反対にボックス内のエアーを車室に戻すことで循環がされています。この冷却ファンが劣化してくると、ファンの軸にガタが生じながら高速回転するため、室内に「ピヨピヨ」という鳥の鳴き声のような異音が発生することが多いです。室内で鳥の鳴き声のような異音がするという症状が出ている場合は、この冷却ファンの可能性が高いので、ファン自体は動作していますが、異音が気になるという方は交換をお勧めします。
●補助クーラントポンプ交換
2006年 ABA-LM42S
補助クーラントポンプとは、ウォーターポンプとは別に取り付けられているクーラントの循環機構です。またNAエンジン(自然吸気)には取り付けられてなく、SCエンジン(スーパーチャージャー)のみに採用されている部品です。SCエンジンはスーパーチャージャーという過給器によって空気を圧縮し、通常より多くの空気を内燃機関へ供給していますが、空気を圧縮すると熱を持つので、冷却する役割として補助クーラントポンプが取り付けられています。この補助クーラントポンプが故障するとSCが効かなくなり、エンジンの出力が低下し、加速しにくいなどの症状が見られます。SCエンジンならではの加速感を楽しむためにも、自覚症状がある方は交換を推奨します。
●シフトソレノイドバルブ交換
2004年 GH-LM44
シフトソレノイドバルブ(SV)はATミッションの下部に取り付けられている部品で、EAT ECU(エレクトリックオートマチックトランスミッション エレクトリックコントロールユニット)からの電気信号を油圧信号に変換し、ギア比の変更とシフトコントロールを行う重要な部品です。SVが故障するとメーターパネルのメッセージセンターに「TRANS FAIL SAFE PROG」のフォルトが入ります。その次はシフトコントロールが出来ない為、自動的に4速固定になり、運転者の自覚症状としては「加速しにくい」という状態になります。今回はミッションのオーバーヒート状態で走行していた矢先に、加速しにくいという症状も併発したとの事。おそらく熱によってソレノイドバルブが故障した事も考えられます。二次的な故障を防ぐためにもフォルトが入ったら無理な走行は控えるようにご注意ください。
●ATオイルクーラー交換
2004年 GH-LM44
ATオイルクーラー交換です。AT(オートマチックトランスミッション)の変速がおかしいという症状で入庫しましたが、点検の結果、オイルクーラーが劣化しオイルが高温となりATがオーバーヒートを起こしていた様です。ATオイルクーラーは、AT内で高温になったオイルを冷却しています。二本のパイプはそれぞれ、フィード(入口)とリターン(出口)の役割を担っており、高温のオイルがオイルクーラー内で冷却され、再びATへと循環されます。オイルクーラーが劣化すると当然ながら冷却機能が低下し、ATオイルの冷却が間に合わずATのオーバーヒートなどに繋がります。劣化した状態で乗り続けると、最悪の場合AT交換の危険性もありますので、自覚症状があれば早急に交換を推奨します。
ATオイルの温度は専用のテスターを接続しないと見ることができません。3rdレンジローバーの場合はATオイルの温度が130度に達すると、内部を守るためにミッションECUの働きで変速制御がかかり、およそ2速固定状態になります。夏場には頻繁に同症状での入庫が増えています。十分にご注意ください。
●サーボトロニック トランデューサバルブ交換
2004年 GH-LM44
3rdレンジローバーのサーボトロニック トランデューサ バルブの交換です。
この車両は5回に1回程度の割合で走行中にステリングが重くなるという症状で入庫しました。ステアリングに不具合が出た場合にまず確認するのがトランデューサ。ステアリングの電子制御は、①ボディーコントロールユニット(BCU)②アンチロックブレーキシステムエレクトリックコントロールユニット(ABS ECU) ③トランデューサ、の三つで行われています。順番としては②のABS ECUから車速信号を①のBCUに送り、その信号を③のトランデューサへ送ることで車速に応じたステアリングの制御がされています。なぜトランデューサを最初に交換するかというと、部品代と作業工賃は③→②→①の順で高くなっていく事、また過去の統計からトランデューサの故障頻度が高いという理由からレンジニアスではトランデューサ交換を先に試験します。今回もトランデューサ交換で症状は改善されました。大小ありますが多くの車両に見られる不具合ですので自覚症状のある方は早めの交換を推奨します。
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